相続税対策を勧めたツケは銀行に損害賠償命令

バブル期に相続税対策として三和銀行(現UFJ銀行)の行員に勧められ、10億円を借りて不動産を購入した男性(故人)の妻が、銀行の説明をめぐり損害賠償を求めた訴訟で、東京高裁(西田美昭裁判長)が「銀行は内容を説明すべき信義則上の義務があった」として、UFJ銀行に約9億円の支払いを命じていたことが4月11日分かった。

判決によると、遺族側は1989年、三和銀行の行員に、男性の死去に備えた相続税対策を相談。「不動産を購入すれば相続税が軽減できる」と勧められたことから、1990年3月、10億円を借り、銀行側が斡旋(あつせん)した新潟県内の不動産を9億5千万円で購入した。

当時すでに、1988年12月31日以降で、土地購入後、3年以内に持ち主が死亡した場合は、「相続税対策」とはならないようになっていた。 男性は、不動産購入から1年5カ月後、83歳で死去。妻は「夫は心筋梗塞(こうそく)の悪化で、3年以上生存する可能性は低かった。銀行が法改正を教えなかったため減税効果が得られず、不動産の価格下落で損害を被った」として、2001年に約11億8千万円を求めて東京地裁に提訴した。一方、銀行側は「男性が数年以内に死去することを知らされたことはない。相続税に関する内容を説明する義務もない」と責任を否定していた。新潟の不動産を、遺族側が2002年に売却した際の価格は1億7千万円。死去した男性の長男は「銀行を信じて家まで失い、破産も覚悟した。高裁は、バブル期の特殊な時代背景をよく理解してくれた」と話している。

一審・東京地裁判決では妻の訴えを棄却した。高裁判決は、「81歳の男性が、3年以内に死去する可能性が少なくないことは容易に認識できた。男性らは、法改正を知っていれば、融資を受けて不動産を購入したとは認められない」などとして、新たに女性の請求を認めた。(以上の記事は産経新聞から引用し、分かりやすくするためそこに手を加えました。)

勧められた節税対策の失敗の責任についての裁判に大きな影響を与える判決になりました。税制改正を知らない事は恐ろしい事です。さらに目的がはっきりした提案には、事後の責任も伴います。ここではその後亡くなったと言う事で、相続税対策にならなかったわけです。ちなみにこの3年縛りは1995年12月31日をもって廃止されています。

記:税理士・公認会計士・会計事務所の方への実務情報応援団:天野隆。211。

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